原状回復工事費用の目安

原状回復は個人・オフィス用物件を問わず、賃貸トラブルの多くを占めるとても悩ましい問題です。

 

自主管理のオーナーだけでなく管理を委託された管理会社ですらガイドラインを理解していない場合があります。

 

トラブルになれば空室の改修工事が進まずアパート経営の収益に大きな影響を及ぼします。

 このページでは原状回復工事の平均的な費用と負担の範囲を説明します。

原状回復工事の平均的な費用

原状回復工事の平均的な費用

不動産投資や賃貸の入退去で原状回復費用をシミュレーションしようとしても、リフォーム費用がどれくらいかかるのか、わからないという人は多いと思います。

 

部位別にリフォームの一般的なリフォーム工事の目安単価を紹介します。

 

※繫忙期は職人さんの確保が難しいため、単価が高くなる可能性があります。

 

壁紙の張り替え費用の目安

1㎡あたり900円~1,500円程度。(張り替えるクロスの材質等によって値段が変わる)

張り替えの面積は床面積の3.5~4倍が目安。

 

○床面積が20㎡の場合

20㎡×4×クロスの単価となります。

これで壁・天井がカバーできます。

 

業者によっては廃材処分や下地処理などの費用が別途となる場合があります。

フローリングやクッションフロアの張り替えの目安

クッションフロアの張り替え

→1㎡あたり3,500円程度~

 

フローリングの張り替え

→1㎡あたり5,000円程度~

 

巾木の交換

→1mあたり600円~

 

※材質により値段が変わります。特にフローリングは防音の有無や材質で大きく差がでます。

別途、廃材処分や施工費用などが必要となります。

畳・襖の表替えの目安

 

畳の表替え

→1帖4,500円程度

 

表替え→1枚3,000円程度

裏→2,000円程度

 

別途、廃材処分や施工費用などが必要となります。

ハウスクリーニング費用の目安

1R・1K 25,000円~

1LDK・2DK 35,000円~

2LDK・3DK 50,000円~

3LDK・4DK 60,000円~

 

エアコンクリーニング(お掃除機能なし) 1機 10,000円~

 

原状回復工事の負担区分

原状回復ガイドラインには、原状回復工事の負担割合と負担区分に関する説明があります。

 

一般的な例ですが、こんなときは借主・貸主どちらが工事費用の負担をするのか紹介します。

原状回復工事を賃貸人が負担する例

 

 ・家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡

・テレビ・冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)

・壁に貼ったポスター等によるクロスの変色、日照など自然現象によるクロス・畳の変色、

 フローリングの色落ち

・賃借人所有のエアコン設置による壁のビス穴・跡

・下地ボードの張替えが不要である程度の画鋲・ピンの穴

・設備・機器の故障・使用不能(機器の寿命によるもの)

 

 

・建物の構造的な欠陥により発生した畳の変色、フローリングの色落ち、 網入りガラスの亀裂

・特に破損等していないものの、次の入居者を確保するために行う畳の裏返し・表替え、網戸の交換、

 浴槽・風呂釜等の取替え、破損・紛失していない場合の鍵の取替え

・フローリングのワックスがけ、台所・トイレの消毒、賃借人が通常の清掃を行っている場合の専門業者

 による全体のハウスクリーニング、エアコン内部の洗浄

 

原状回復工事を賃借人が負担する例

 

・飲みこぼし等の手入れ不足によるカーペットのシミ、冷蔵庫下のサビを放置した床の汚損、引越作業等で生じた引っかきキズ、賃借人の不注意によるフローリングの色落ち。

・日常の清掃を怠ったため付着した台所のスス・油、結露を放置して拡大したカビ・シミ。

・クーラーからの水漏れを賃借人が放置して発生した壁等の腐食。

・喫煙によるヤニ等でクロスが変色したり臭いが付着している場合。

・重量物をかけるためにあけた壁等の釘穴・ビスで下地ボードの張替えが必要なもの。

・天井に直接付けた照明器具の跡。

・落書き等故意による毀損。

・ペットにより柱等にキズが生じ、または臭いが付着している場合。

・風呂・トイレ等の水垢、カビ等、日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損。

・鍵の紛失または破損による取替え。

・戸建て住宅の庭に生い茂った雑草の除去。

 

賃借人に費用を負担させる特約

経年変化や通常損耗によって汚れたり壊れたりした部分の修繕費用を賃貸借契約書に明記された特約によって借主に負担させることは最高裁判所も認めています。

 

ただし、借主が退去時に負担する金額が明記されていて、借主がその金額を認識したうえで契約を締結していなければ、その特約は有効とは言えません。

 

ハウスクリーニング特約についての判例が、原状回復ガイドラインに記載されています。

特約が認められた判例の中で裁判所は下記のポイントをあげています。

 

①契約書等には賃借人が契約終了時にハウスクリーニング費を賃貸人に支払う旨の記載が存在する。

②賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書にハウスクリーニング費を借主が負担することの記載がある。仲介業者が口頭で説明したことは認められる。

③専門業者による清掃費用として相応な範囲のものであること。

④賃借人の利益を一方的に害するとまで言うことはできない。

 

賃借人に原状回復費用の一部を負担させる特約は、要件を満たせば有効となります。

要件を満たさない特約で費用負担を求めることはできませんので契約時に確認をすることが必要です。