老後資金はいくらあれば安心なのか?

老後資金準備

「公的年金だけでは安心な老後生活は送れない」というのは、周知の事実になりつつあります。

 

資金を準備するとしても「実際に老後資金がどのくらいかかるか?」、「公的保障はいくらもらえるのか?」、この2つが分からなければ、準備のしようがありません。

 

いくら足りないのか把握するために、まずは公的保障を確認しましょう。

公的年金制度の解説

我が国の年金制度は、国が運営主体となる公的年金と、国以外が運営主体となる私的年金に分かれています。

さらにそれぞれが2層構造になっているため、全体として4階建てになっています。

 

公的年金は、国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員などの被用者が加入する「厚生年金」の2階建てになっています。

 

公的年金は社会保険料方式で運営されていて、強制加入による保険料を主な財源としています。

賦課方式と呼ばれる現役世代から集めた保険料を、そのときの年金給付にあてる世代間扶養の給付方法を採用しています。

 

公的年金は少子高齢化の進行で長期的な財源の維持が難しくなったため、2004年の法改正で現役世代の保険料水準の上限を決め、その範囲内で給付を行う「保険料水準固定方式」を導入しました。

 

この保険料水準方式を維持するために、マクロ経済スライドと呼ばれる給付と負担の変動に応じて、収入の範囲内で給付を自動調整する仕組みが導入されています。

 

給付水準の目安は所得代替率(現役世代の平均手取り収入との割合)50%を目安としています。

公的年金からの給付は3種類

公的年金からの支給事由は、①老齢 ②障害 ③死亡の3つです。

それぞれ2階建てとなっています。

 

1階部分は国民年金から、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金が支給され、2階部分は厚生年金から、老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金が支給されます。

国民年金についての解説
厚生年金についての解説
年金定期便を確認しよう
私的年金についての解説

老後の生活費はどれくらいかかる?

老後の生活費

豊かな老後の生活を送るためには、退職後の資金計画がとても重要になります。

 

退職後の生活水準は人それぞれです。

「退職後は現役時代にできなかった旅行をしたい」、「田舎で自給自足の生活をしたい」、「趣味や習い事をしたい」など、いろいろな生活スタイルがあり、それにかかる費用も個人差があります。

 

どういう老後生活を希望するかで生活費は異なりますので、一概に生活費が

必要とは決められません。

 

老後の生活費については、さまざまな調査がありますので、参考までに紹介します。

総務省統計局 家計調査

総務省統計局の家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の可処分所得(実収入−社会保険料・税)は193,743円、高齢単身無職世帯の可処分所得は110,933円です。

 

それに対して消費支出は夫婦世帯が235,615円、単身世帯が149,603円となっていて、収支が夫婦世帯で-41,872円、単身世帯で-38,670円となっています。
この統計は平均値のため、現実よりも高めになっている可能性は高いですし、支出の1/5が教養娯楽、交際費ですから、最低限必要な生活費とは言えないかもしれませんが、ある程度ゆとりのある老後の生活をしようと思うと、公的保障だけでは足りないことが分かります。
高齢夫婦無職世帯の収入
高齢夫婦無職世帯の収入
高齢夫婦無職世帯の支出
高齢夫婦無職世帯の支出

高齢単身世帯の収入
高齢単身世帯の収入
高齢単身世帯の支出
高齢単身世帯の支出

生命保険文化センター

生命保険文化センターのアンケート調査によると、夫婦2人で老後生活を送る上で必要と考えられている最低日常生活費をみると、平均額は月額で22.0万円、「20~25万円未満」が31.5%と最も多く、以下「30~40万円未満」(15.0%)、「25~30万円未満」(13.6%)の順となっていて、こちらの調査でも公的保障だけでは足りないことが分かります。

 

「ゆとりある老後生活費」は月額で平均34.9万円となっています。

最低日常生活費との差額の使い道は、「旅行やレジャー」、「身内とのつきあい」、「趣味や教養」という回答が多数となっており、老後の生活を充実させるためには、公的保障以外の資金準備が必要だと言えます。

最低日常生活費
最低日常生活費
ゆとりある老後の生活費
ゆとりある老後の生活費

年金は払い損になる?

年金は払い損になる?

よく、現役世代は年金は払った額よりももらえる額が少ないという話があります。

年金制度は長生きのための保険です。
40年かけて保険料を支払い、65歳から死ぬまでの期間で、給付を受ける保険です。
国民年金は、月額16,410円(令和元年度)を40年間支払い、65歳から年額780,100円の給付を受けます。
厚生年金は、給与の約20%(事業主負担を含む)を40年間支払い、65歳から現役世代の給与の約50%を目安に給付を受けます。
単純な計算で長生きすれば得をするのが公的年金です。
65歳までの間には、死亡保障と一定の障害に対する保障もついている保険です。
しかも、支払う保険料は全額所得控除される非常に優れた保険と言えます。
現役世代に比べて、今の高齢者が掛金に対して手厚い保障を受けているのは事実ですが、若い人が年金を払わないという選択は良い選択とは言えないでしょう。
 
年金だけで生活はできないけれど、長生きすれば得をする保険なので保険料は払っておいたほうが良いと言えるでしょう。