一般的に不動産は高額です。
不動産そのものの価格にもよりますが、不動産を現金一括で購入できる人は限られたごく一部の人です。
そのため、不動産投資をする時には、投資資金の一部または全部を金融機関から融資を受けます。
金融機関は不動産の担保価値と、融資を受ける人の審査をします。
融資を受ける「人」の審査を通過できない人は現金一括で投資資金を支出しない限り、不動産投資をするスタートラインに立てないことになります。
スタートラインに立てるかどうか、まずは金融機関に融資の打診をしてみましょう。
融資の可能性がないのなら、この先の物件探しは、ただの時間の無駄遣いとなってしまいます。
不動産ポータルサイトなどで物件情報を収集します。
ポータルサイトには莫大な数の物件が掲載されています。
最初は、投資をしたい地域を絞って広告を眺めるだけでもいいと思います。それだけで自分が投資したい不動産の妥当な価格をなんとなく理解することができます。
この不動産の妥当な価格を知るということが、投資用不動産を探す時に最も重要な知識です。
ある程度の相場感がつかめてきたら、事前に行った金融機関との融資相談の結果などをもとに、ある程度条件(物件価格・物件種別・所在地など)を絞って物件をピックアップしましょう。
自分の投資基準に合う物件をピックアップしたら、資料請求の問い合わせをします。
資料請求をした不動産会社の数だけ営業されますので、対応可能な範囲で物件の数を絞りましょう。
問い合わせをした時点では、多くの営業を受けますが、問い合わせへの返信の丁寧さ、保有資格、経験年数などで営業マンのレベルがある程度分かると思います。
ごく一部の物件を除いてポータルサイトに掲載されている物件は、日本の不動産会社ならどこでも取り扱いできます。
自分との相性が合う、信頼できる営業マンが見つかったら窓口を2,3人に絞ると物件が探しやすくなります。
自分と合わないと感じる営業マンには丁寧に断りの連絡をしましょう。
物件の問い合わせをすると物件の概要書やレントロールが送られてきます。
物件概要書には、住所・価格・表面利回り・建物構造・築年数・土地建物の面積・設備などの情報が記載されています。
概要書の重要なチェックポイントは物件の遵法性です。
要するに「建物が建築基準法違反ではないこと」が重要なのです。
20年ほど前までは、検査済証のない物件は一般的でした。
建築基準法に適合する建物で建築確認申請をして、申請と少し違う間取りの建物を建てて完了検査を受けないことは少なくなかったのです。
銀行も当時は検査済証のない物件にも融資していましたが、耐震偽装問題などの多くの不祥事を経て、違反建築の建物には融資をしない銀行が増えました。
ノンバンクの中には多少の違反はOKというスタンスの金融機関もありますが、将来的には売却に苦戦したり、建て替えのときに同規模の建物が建てられないなどの問題が残ります。
違反建築の物件は価格が安かったり、利回りが高かったりしますが、将来のことを考えれば避けた方がいいでしょう。
レントロール(賃料表)では、家賃が適正かチェックします。
新築物件の場合には、新築プレミアム家賃になっていて、入居者が入れ替わると家賃が下がることがあります。
中古物件でも、新築時から長期間住んでいる人が相場よりも高い家賃で住んでいることがあります。
どちらも今後の入退去で家賃が下がる可能性があるので、事前に家賃相場を確認して、相場賃料に引き直し計算しましょう。
都心部の物件では少ないですが、地方都市の賃貸需要の低い地域の物件では、偽装入居の可能性もチェックしなければなりません。
現オーナーの親族や売却を始めてすぐに多数の新規入居がある場合、偽装入居の可能性があります。
所有者が変わった途端に退去してしまう可能性がありますので注意しましょう。
3-1.現地確認
机上の物件評価で良い物件があったら現地を確認しましょう。
現地確認のポイントは以下の4点です。
①立地条件の確認(利便性・近隣の環境など)
②建物の状態の確認(外観・可能なら室内)
③設備の確認(共用設備・エアコン・給湯器など)
④入居状況・管理状態の確認(清掃状況・共用部分の管理状態)
現地には公共交通機関で行くことをお勧めします。
周辺環境や利便性などを入居者と同じ視点で確認できます。
建物の状態は建築士などの専門家でなければ、詳細に確認することはできません。目視で建物の傾きや大きなひび(雨水が侵入するくらい)を確認してください。
設備は製造年月のチェックをしておくと、交換時期の予測ができるので、確認しましょう。
管理状態はポストやゴミ置場を見ると確認しやすいと思います。
共用部分にたくさんの私物を置いている入居者はトラブルの原因になる可能性があるので、チェックしておきましょう。
3-2.購入申込書の提出
現地を確認して購入する物件を決めたら、購入申込書(買付証明書)を提出します。
購入申込書には以下のルールがあります。
①契約書ではないので法的拘束力はない
②書式はフリー、しかし最低限書いていないといけない項目はあり
(氏名・住所・契約希望日・購入希望額・手付金・融資特約)
③先着順ではなく、売主が申込書の内容を精査して購入者を選ぶ
法的拘束力はありませんが、買主の都合でキャンセルすると信用を失い、場合によっては出禁になります。
契約書ではありませんが、とりあえず申し込むというような気持ちで申込書を提出するのはやめましょう。
4-1.売買契約締結
購入申込書を提出し、売主から売却の返事を受けたら、具体的な契約条件を打ち合わせます。
条件面で折り合いがつくと、売買契約締結となります。
売買契約書に署名捺印する前に、宅地建物取引士から対象の不動産について、重要事項説明を受けます。
重要事項説明書には対象不動産に対する様々な説明が書かれています。疑問点などはしっかりと確認しましょう。
続いて売買契約の締結となります。
売買契約締結の注意点は以下の点です。
①約束したこと(特約条項など)は必ず書面にする
②サインする前に契約内容を確認する
③手付金・残代金などの支払額・スケジュールを確認する
4-2.残金決済
決済というのは、売買代金の全額を支払うことです。
一般的には、取引の安全のために、物件の引渡しは売買代金の全額の支払いと同時に行われます。
所有権移転の登記が合わせて行われるため、司法書士が立ち会うことが一般的です。
物件の引渡しを受ける時に、賃料等の精算、賃貸契約の引継ぎ、賃借人への通知の作成などを行います。
全ての手続きを終えて、投資用不動産のオーナーとなります。
不動産投資というと、投資用不動産を購入すれば成功というイメージがあるようですが、不動産オーナーになることはスタートラインに立ったにすぎません。
これから、収益を生む不動産を使った事業が始まります。
日々の不動産管理・入居者管理、入居率をキープするには修繕も必要かもしれないし、不動産賃貸業は税金との戦いもあります。
これから日本の人口は減っていくことが予測されていますから、不動産賃貸業は衰退産業とも言えます。
しかし、人口が減っていると言っても、成功をしている大家さんもたくさんいます。
人口が減っていても、持ち家よりも賃貸を選ぶ人は増えていて、賃貸需要が減っているとは思えません。
不動産賃貸業は、楽して儲かるという産業ではありませんが、経営者として、工夫をすれば、やり方次第でまだまだ安定した資産を得ることができる事業だと言えます。
投資用不動産の利回りには表面利回り(グロス)と、純利回り(ネット)の2つがあり、以下のように計算されます。
表面利回り=満室想定賃料÷物件価格
純利回り=(年間実賃料収入‐賃貸経費)÷物件価格
※年間実賃料収入‐賃貸経費=純営業収益(NOI)
不動産投資の収入は、家賃などの不動産から生じる利益、支出は税金・物件の管理にかかる費用などのことです。
不動産投資全体の収支は、物件を保有している期間中の税引き後キャッシュフローと、物件を売却時の税引き後の売却益ということになります。
以下で詳しい収入・支出の項目と収支構造を説明します。
不動産投資の収入は所有している不動産が生み出す利益です。
具体的には、賃料(部屋・看板・駐車場など)、売却益ということになります。
売却益は保有期間によって、建物の価値や土地の時価などが異なるため、定期的に資産価値の算定を行い、現金化した時の資産価格を把握しておくことが必要です。
不動産投資の支出には、保険(火災保険・地震保険など)、メンテナンス費用(設備保全・点検・清掃など)、管理費用(管理委託費用など)、通信光熱費(ネット回線・共用部分電気代など)、借入金利息、修繕費、税金(固定資産税・所得税など)があります。
最大の支出は税金です。
税金を無視した事業計画をよく見かけますが、税引き前と税引き後では、実際の収支が全く違うものになりますので、不動産投資は税金との戦いだということを意識しましょう。
不動産投資に限らず利益は、収入から支出を控除したものになります。
物件を保有している間は、純営業収益(NOI)の積み重ねです。
投資全体の収益はNOIの累積+売却した場合の売却益、もしくは現物の不動産の資産価値ということになります。
日本の不動産評価は経年による建物の減価が大きいので、土地の価格が高い場所ほど売却益や資産価値が得やすいと考えられます。
不動産の融資と言うと、住宅ローンのイメージが強いと思います。
しかし、投資用不動産のローンは、住宅ローンとは審査基準が全く違います。
投資用不動産融資は融資を受ける人の属性(勤務先、年収、資産、居住地、保有物件)によって、銀行の選択が変わります。
さらに、銀行によって担保となる不動産の評価の方法、返済期間の考え方も違うため、全て個別に相談する必要があります。
以前には、個人の属性による審査にパッケージ化されたアパートローンがいくつかありましたが、スルガ銀行の融資問題で金融庁がアパートローンへの監視を強化して以降、ほとんど見かけなくなりました。
マインドセットと言っても、成功者は~、一点集中で~、結果を手に入れたいなら行動を~、自分よりもレベルの高い人付き合って~とか、そういう精神論的なことではありません。
どんな投資にも言えることですが、投資を続けているうちに経済状況が変化をしたり、リーマンショックやブレグジットなどの突発的な暴落はあり得ます。
その時にパニックにならないためには、合理的な思考を持ち続けることが大切です。そのために準備をしておこうという事です。
具体的には下記の5点のポイントがあります。
①融資を利用するならアパートローン・事業性ローンを理解する。
②年に1度は保有物件の資産診断を行い、資産が何パーセント急落したら撤退すると決めておく。
③多少の金利変動・空室損で、収支がマイナスにならないようなシミュレーションで投資をする。
④不動産投資は、利益確定(売却)するまで収益は、含み益であり含み損であることを意識する。
⑤不動産投資は、不動産賃貸業という事業であると意識し、情報収集や知識のアップデートを継続する。
不動産投資は日々変化する経済状況、社会構造の変化に対応しながら長期間に渡って利益を上げていくものです。
誰かのやり方を真似すれば、失敗を回避しながら月収100万円以上を達成できるというようなものではありません。
上記の5点のうち、「不動産投資=不動産賃貸業」という点は特に強く意識してほしいと思います。
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